09. プライバシー問題に関する相談

Q.1 社員名簿作成のため出生地および生年月日と出生時間を聞かれました

現在勤務している会社より、社員名簿を作成するため、出生地および生年月日と出生時間を教えるように言われました。会社に出生地や出生時間まで教えなければならないのでしょうか? その上、全員に公表されるのはいかがなものでしょうか? 私としては、プライベートなことなので、そこまで公表したくないのですが、拒否できますか? アドバイスをお願いします。 

Answer

ご相談の内容が、プライバシー問題についてですので、専門家のサポートを踏まえ、法理と対処策についてアドバイスします。

(1)社員名簿作成について
1.プライバシー・個人情報保護の原則 1980年秋に出された「OECD理事会の勧告8原則」が、今日国際的なガイドラインとして、先進諸国の関係法制のベースとなっています。

(1)収集制限の原則
個人情報の収集は適正・公正な手段により、本人の同意を得ること。

(2)情報の質の原則
個人情報の保有は目的に対して必要最小限であり、正確・最新の状態を維持すること。

(3)目的明示の原則
個人情報の収集・保有は利用・提供などの目的を明らかにすること。

(4)利用制限の原則
当初明示した目的外の利用・提供は本人の同意がない限り禁止すること。

(5)安全保障の原則
情報の減失・破損、改ざん・盗用・不当アクセスなどの防止、災害による被害を防止すること。

(6)公開の原則
取扱者は個人情報の存在・種類・利用目的・提供先、保護責任者の氏名・保護施策、本人の権利などについて、公表すること。

(8)責任者配置の原則
取扱者は個人情報の保護責任者を配置し、その所属・氏名などについて公表すること。 個人参加の原則 本人は取扱者が保有する自己の情報について知る権利、異議を申し立てる権利、訂正・削除・中止などを請求する権利があることを明らかにすること。

2.当該の社員名簿
今日個人情報の利用が増え、狙われている現実があり、それだけに社員名簿作成・配布などについて、特段の配慮が必要です。

(1)出生地・出生時間などは常識的に見て不必要。必要ならば、その目的が明示されなければならない(前項1)。従来、社員名簿には自宅住所・電話番号などが記載されていることが多いが、今日的状況の下では、氏名・所属(TEL含む)・役職程度にとどめることがベター(入社時の戸籍謄本も不要との会社が増えている)。

(2)目的外の利用などを防止するために、名簿には「不許複製・他目的利用」の禁止(前項4)を明記し、万一、不当な利用が発生した場合は、損害賠償を請求することも明記する。ネット上での利用の禁止(どうしても必要なら登録項目を必要最小限に限定)。あるいは個人として、登録拒否する。

(3)社員名簿作成の前提として「本人の同意」が原則(前項1)である以上、本人の権利として不同意・拒否する。あるいは、内容項目によって拒否。

(4)会社側によるデータベースの作成などについて監視が必要。作成されているならその内容を前項の6)により公表させ、利用・提供(前項2、3、4、5)などについて明らかにさせ、本人の情報については開示させる権利があり、情報内容に異議がある場合は、訂正・廃棄・中止を求める(前項8項)。

(2)プライバシーの権利について
プライバシーの権利は、基本的人権である個人の自由の一環であり、世界人権宣言、国際人権規約によれば「何人も自己の私事、家庭、家族もしくは通信について、欲しいままに干渉され、また名誉、信用に対して攻撃されることはない」とされ、日本国憲法では第13条の「個人の尊重・幸福追求の権利」によるとされています。

以上の立場をベースにしつつも、現在の情報社会の下では、「自分の情報を自分でコントロールする権利」として、より積極的な権利として進化し、それが国際社会の概念となっています。

そこで今日では、プライバシーの権利は個人情報を保護することによって保障されることとなります。従って、日本的な「個人の秘密」との解釈による「守秘義務」でプライバシーが守り得るとの立場は、今日の国際社会では通用しません。